帰って来るなり真剣な顔で、書斎の窓越しに
「お母ちゃん、これすごく大事なことだから、仕事止めてちゃんと話を聞いて!」
何事かと、仕事をそのまま一先ずおいて食卓へ。
何やらごそごそを手から紙切れを出す。
「これ、今日、もらった…。」
君の11年の人生においてはじめての恋文、ま、ラブレターだったね。
実は先週からの流れがあり、同じクラス
の男の子が彼女のことを好きだという噂があり、
「え~、どうしよう!」
と、あたふたしつつも盛り上がっていたところ。
生まれた時から一緒にいる幼馴染で今は隣のクラスにいる子を、今までは将来の旦那さんと決めていた君は、戸惑いと同時に結構まんざらでもない様子。
手紙には君を好きになった理由が、一杯書いてあった。「噂が先行しちゃって、ちゃんと理由を伝えてなかったから」、と。これだけでも、会ったことないけど、いいヤツかも、って思える。
「親切で、思いやりがあって、面白くて、可愛くて、頭が良くて・・・・」
ま、親として聞いていても確かに悪くないよ。
でもね、私の頭に焼き付いたのは、
これを読んで聞かせてくれているときに君が浮かべた、あの一瞬の表情。
いろいろな感情の混ざった本当に微妙な、しかも初めて見せるあの表情。
ほんの一瞬の間に、子供から少女へ、そして女へとあっという間に変化したあの表情。
これを見ることができたのは、在宅で仕事をしてる親冥利に尽きるなぁ、としみじみ思った。
こうして子は巣立つ準備を着々と進めてるわけさ・・・。親として出来ることってどれくらい残されてるんだろうか。
追伸:手紙、写真に撮ったけど、やっぱり子供とはいえ、きっと大事にしたいものだと思うので載せないよ。
Comments