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ボランチを知った日

あやちゃんのブログ

私にある風景が浮かんできました。


数年前、

私はひょんなことをきっかけに、

障害福祉施設でソーシャルワーカーをしていました。


その施設に通っていた

自閉症と言われる発語のない(言葉が出にくい障害)Aさんは、

施設に来ると、必ず下駄箱の靴をすべて綺麗に揃えないと気が済まないのでした。


下駄箱と言っても、家庭の下駄箱ではありませんから、

学校の下駄箱のように相当な数の靴が入っているのですが、

1時間以上かけて彼なりの気に入る具合に

一足いっそく、口笛を吹きながら整えるのでした。


その間、福祉職員はというと、

真夏であろうと、雨の日だろうと、彼に付き添い

外と変わらない気温の玄関口で1時間、

彼が整え終わるのを待つのが仕事でした。


Aさんの担当は若い男性職員で、

声をかけながら、辛抱強く見守っていました。


こだわりの強いAさんには、もう一つ

毎日行う儀式のようなものがありました。


掃除当番表に貼り付けてあるマグネット製ネームプレートを

ぐちゃぐちゃにする、というものでした。


ホウキ だれだれさん

雑巾  だれだれさん

窓   だれだれさん


だれだれさん、の部分にマグネット製のネームプレートが貼られている当番表。

彼はもう、それはそれは、あられもない方向に

名前の書かれたマグネットを貼るのでした。


それが終わると、儀式終了。

彼は施設の中でリラックスできるようでした。


私は毎日行われるマグネットプレートの配置交換後、

誰が何の掃除当番なのかがわからなくならないよう

朝一で写メを撮っておくのが日課になっていました。



そんなある日、若い男性職員が小走りに近寄ってきて、私の耳元でささやきました。


「山本さん、これ、サッカーのポジションです!!」


ん?


掃除当番表を遠くから見てみたら、

Aさんは、ネームプレートをサッカーのフォーメーションに見立てて

並べ替えていたのでした。



「山本さん、今日、ボランチっすね。」

と、若い男性職員。


「ボランチって何?」と、私。


「自分で調べてください。」と彼。


その日以降、

面倒くさいなと思っていたAさんのマグネットの配置交換は、

自分がどのポジションに着くかの楽しみに変わっていきました。




私は発語のない彼の心が伝わってきたような気がして、

嬉しいような気持ちになったものです。


でも、それは、一方で

自分が理解できる範疇に

彼の行動が当てはまったことによる安心で、

結局自分の安心かい、なんてあきれもしました。



同じ場に寄り添い、

彼の行動を評価せず、

ただ、見守り、理解しようとする職員がいて、

私は気づかせてもらった。


若い男性職員の、やさしいまなざしが今でも思い出されます。



そんな風に、他人と共に在ることができれば、

それだけで人生が豊かになっていきそう。


強い立場の人も

弱い立場の人も

私自身も。











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